伊豆半島一周自転車の旅 #04:伊豆最南端を目指せ

アメとムチ

「うわぁまた登りだよ…どんだけ登らせるんだよ…」

熱海から下田までの道はとにかくアップダウンが多かった。最初のうちは1つ・2つなんて登り坂を数えていたが、5つ目ぐらいからは数える余裕も無くなり最終的には『たくさん』になった。途中、同じ様に自転車で伊豆半島をまわっているであろう自転車人に抜かれ(2人も)凄く悔しい思いもした…

「チキショー!抜き返してやる!」

なんて気持ちだけは頑張ってみたものの、肉体はついてこれずに離されるばかりだった…実際…抜かれた2人とはその後会う事は無かった…涙。

「おりゃーーー!」
「うおぉーーー!」

と奇声をあげながら必死こいて坂道を登る30歳の肉体もいよいよ限界に近づき、遂には自転車に乗っている時間より『歩いている時間が長いんじゃないか?』と自らが疑問に思うようにまでなってしまった。時速5kmにも満たないようなスピードで坂道を登り続ける…

「ぶぅぇ~しんどい…」

それでも絶妙なタイミングで現れる伊豆半島の絶景を見ると…

「うわぁ…すげぇ…」

と僕のテンションは回復する。そして坂道を登り切った後に迎える、絶景をみながらの下り坂は、この上ない爽快感を与えてくれる。

「ヒヤッホーーー!」

言って見れば…伊豆半島は『飴とムチ』のバランスが天才的で、男の扱いがめちゃくちゃ上手い。

「あぁ~俺…実際こういう女の人に弱いんだよなぁ…思い通りにならないっつーか…なんつーか…そのクセたまに甘えて来るみたいな…」

気が付けば、僕は『伊豆半島ちゃん』の手のひらの上で完全に転がされていた…あれ…?俺って…もしかして『M』?

ペリーの下田観光

「ここにペリーが来たのか…」

僕は『下田港』に到着した。港周辺は公園になってる(?)のか芝生が整備され、とても綺麗だった。

「まだ目的地まで少しあるけど、今日ここでテント張っちゃえば?」

そんな誘惑を芝生が仕掛けてくる。でもよくよく見てみるとテント張る張らない以前に、そもそも芝生へは『進入禁止』だった。僕は危うく芝生にハメられ、芝生管理人に怒られるところだった。

「やはり綺麗な芝生にもトゲあるんだな」

そしてこの歴史的にも有名な下田港周辺を少し観光しようと近くにあった案内版を見ると『ペリー来航碑』と『ペリーロード』たるものを発見…

「『開国して下さいよ~』を見るっきゃないっしょーっ!」

石廊崎までのルートからは外れるものの、たいした距離でもないので『ペリーエリア』に向かってペダルを踏む事にした。『ペリーエリア』は日曜日ながら観光客の姿はそれ程無く、簡単にペリー像を占領し、写真を撮る事が出来た…『カシャッ!』

それにしても下田は外国人観光客が多かった。下田駅にも、近くの海岸にも『京都と同じ』くらいの外国人観光客がいたと思う。そんな彼らの横を馬鹿デカイ荷物を背負い、頭にはタオルを巻いた『自転車乗り』が通り過ぎて行くと、彼らは結構な勢いでこちらに目を向け、中には僕を指さす人もいた…

「オイッ!アレミロヨッ!“バイスィコー”デ、タビシテルヤツガイルゼーイカスーッ!」
「ワーオ!アンビリーバボー」
「オー!ニンジャ!」

彼らの話している声は全く持って僕の耳には届かなかったけど、恐らくこんな感じの会話なんだろう…

「どーだい外国人諸君!!日本人も捨てたもんじゃないだろ?」

僕は上機嫌で下田を後にして、石廊崎を目指した。

エネルギー不足

下田を出てから石廊崎までの道はアップダウン無く平坦な道のりだった。サイクルメータを見てみると平均して時速20キロ後半で走れている。極めて順調。

「おぉ!雑誌で読んだ通り南伊豆は平だ!楽勝!楽勝!」

そんな油断している僕に忍びよる悪魔の『ハンガーノック(空腹)』の影…

「あ~なんか腹減って来たなぁ…次コンビニ見かけたら寄ってこー」

そんな事とはつゆ知らず、僕はペダルを踏み続ける。でも『次のコンビニ』はいっこうに見えて来ない。

「あれ…全然コンビニないんすけど…まさかこのまま石廊崎まで無い…なんて事はないよな…」

少しずつ焦りが出てくるも、自分の空腹を誤魔化すかのようにスポーツドリンクを飲みながら自転車をこぎ続ける。

「ハァハァハァ…」

そして石廊崎まであと少しという所で…ついに…『ガクーンッ!』。僕はハンガーノックに襲われた。空腹からくるエネルギー不足で、全身の力が一気に抜けフラフラのヘロヘロになってしまった…

「うわっ…やばい…」

普段なら坂とも言えないような道も前に進めず、自転車を降りて押すにしても、自転車にもたれかかるようにしないと倒れてしまいそうになった…

「こりゃヤバい…ゴクリ…」

僕は少しでもエネルギーの足しになるようにと、残りのスポーツドリンクを一気に飲み干し、前に進んだ。

「…石廊崎…もう少しのハズだろ…まだかいな…」

幸いな事に少し進むと道は緩やかながら下り坂になり、自転車に股がってみると、ペダルを踏まなくてもゆっくりと前に進むようになった。そして間もなく見えて来た案内板『ようこそ!石廊崎へ』

「…助かった…」

なんとか今日の目的地までたどり着く事が出来た…

ネゴシエイター

「すいませ~ん」

「………」

「あれ…?すいませ~ん」

「………」

誰もいない。僕は『ようこそ石廊崎へ』看板向かいの『オートキャンプ場』受け付けで管理人を呼んでいた。少しすると僕が入って来た入口のドアが開く音が聞こえ、オジサンが1人登場した。

「ハイハイなんでしょう?」

ここの管理人さんだった。

「あのぉ…自転車で旅をしているモノなんですけど、この辺にテント張れそうな所ないですか?」

我ながら『キャンプ場の管理人』に対してする質問じゃないなと思った。

「お前…俺を馬鹿にしてるのか?」

今思えばそう言われても不思議じゃないなとも思う。でも管理人さんは僕がキャンプ場じゃなくて『野宿でテント』を張りたがっている事を理解してくれたようで、

「あーここら辺はねぇ全面的にキャンプとかテントとかは禁止されてるからねぇ…」

まぁ確かにここら辺は断崖絶壁が多いからな…

「そーなんですかぁ…」

「うーん…『伊豆半島』はねどこも駄目なんだよ…」

「…え!?伊豆半島はどこも駄目?」

僕は前日に熱海サンビーチでテント泊をしている。

「熱海も本当は駄目だったのかなぁ…」

「たまたま管理人とかに見つからなかったから一晩を過ごせたんだ…」

今更ながら少し心配した。でもどこかにテントを張らなければならない僕はここから『交渉』に入る。

「もうし訳ないんですけど…AC電源とか一切要らないでテント張らして貰えないですかね…」

「いやぁ…ウチはオートキャンプ場だからねぇ…車用の区画しかないんだよ…」

「ちなみにお幾らですか…?」

「1区画5千円」(どーん!) …5千円?それは高い…

「…キツイなぁ…自転車で貧乏旅行なんで…お金ないんです…」

となんだかんだと続けて行き、一時は他のキャンプ場を紹介されるも、粘りに粘って最終的には…

「んん…ちなみに幾らぐらいなら出せるの?」

「3千円が限界です…」

「んーじゃあいっか!3千円で…お兄さん限界そうだし…でも他のお客さんには絶対に内緒だよ…」

「有り難うございます!」

こうして2日目の宿が決まった。『お兄さん限界そうだし…』ハンガーノックが効いてたかな…ならもう少し値引き行けたなぁ…(笑)

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